三宅島大学誌

2011〜2013年度にかけて実施した「三宅島大学」プロジェクトをふり返ります。

キッズリサーチ:2日目

2012年8月19日(日)

たとえば三宅村の小学1年生にとって、「大学生」の存在はどのように映っているのだろうか。おそらく、ほとんどイメージできない「未知の世界」だろう。で も、それでもかまわない。1日目を終えて、そう思った。子供たちの夏休みの風景に、「よくわからないお兄さん・お姉さん」と一緒に過ごしたことが、少しでも刻まれていればいい。あとは、今回のプロジェクトの経過を、ぼくたちがきちんと記録しておくことだ。

午前の部

きょうは日曜日。1日目に算数の宿題を片づけた女の子が、国語の宿題を持ってやって来た。なかなか調子が上がらない様子だったが、静かな教室だ。

三宅島大学本校舎(御蔵島会館)を出て、坂を少し下ると、「691」というカフェがある。港を臨む、気持ちのいい芝生のスペースにピクニックテーブルがあ る。教室のほうが落ち着いてきた様子だったので、ちょっと(のつもりで)「キッズリサーチ」を離れて、コーヒーを買いに行った。

店主のOさんと、いろいろと話をした。「691」は、とてもいい感じの「行きつけの場」になりつつあるようだ。コーヒーショップやカフェ、床屋などが、地域コミュニ ティのなかで、人びとをつなぐ役割を果たしてきたことは、多くの研究者が指摘していることでもあるし、日々の生活をつうじて体験的に知っていることだ。

そして、当然のことながら、コーヒーを飲めること、お土産を買えることだけでは「行きつけの場」にはなりえない。コミュニケーションが場をつくり、人を育てる。Oさんは「駆け込み寺」という言葉をつかっていたが、じぶんの生活圏のなかに、ふと立ち寄れる場所があり、そこにはかならず「よくわからないオジサン (…ごめんなさい)」(そして、男性である必要はない)がいること。それが重要なのだ。

三宅島には、まだまだ昔ながらの紐帯が残っていることはまちがいないが、海を臨むちいさなカフェに点る明かりを求めてやって来る人が、確実にいる。いろいろな情報が集まる、常連が生まれる店だ。Oさんという“マスター”がいて、(学校では習わない)いろいろなことを教えてくれる。黙って話を聞いてくれるだけかもしれない。それだけのことでも、じつは後からじわじわ効いてくる。

f:id:who-me:20120819123442j:plain

「キッズリサーチ」のことにも話がおよんだ。いまのところ、子供たちにとって、大学生は「よくわからないお兄さん・お姉さん」だ。いずれ「大学生って何だろう」と、マジメに考えるときが来るだろうか…。

気づけば、もうお昼に近かった。

午後の部

きょうは島市があるというので、昼休みにみんなで港まで歩いて行った。きょうの海は、本当に綺麗だった。昨年9月に三宅島大学の開校式をおこなったときには、荒々しかったが、全然ちがう。太陽は、相変わらずジリジリ。

島市から戻って、午後の部は5人の子供たち。全体的に小学校低学年の子供たちが多いので、三宅島大学の校舎は、とても賑やかになる。集中して机に向かうのが、なかなか難しい(のはしかたないか…)。すぐに、走り出し、外に行きたがる。

でも、とにかく宿題を終わらせる(あるいはひと区切りつける)までは、「フィールドワーク」はしないというのが、ぼくたちの方針なので、早く終わった子供たちは玄関のあたりで遊びはじめる。「一抜け」なのだ。まだ宿題が終わらない子は、みんなを待たせつつなんとか集中する。そうやって、宿題を少しずつ片づけ る。

きょうも、子供たちにデジカメを渡して、近所の写真を撮ってもらった。ちいさくプリントアウトして、黒板に描いた地図に貼っていくつもりだ。ふだん、カメラを持った人とどのように向き合っているか、つまり、じぶんがどのように写されているかが、子供たちの写真の撮り方にも表れているようで、とても面白い。

f:id:who-me:20120819160619j:plain

相変わらず、大きな黒板は子供たちを惹きつけている。「大学」や「大学生」はともかく、大きな黒板がある部屋を、じぶんたちの「行きつけの場」だと感じてくれるだろうか。「こたえ」のある問題もあるが、「こたえ」のない問題もたくさんある。というより、やがては問題そのものを探すことになるのだ。

◎この日誌は2012年8月20日(月)にFacebookの「ノート」に書いたものです。(原文のまま)