三宅島大学誌

2011〜2013年度にかけて実施した「三宅島大学」プロジェクトをふり返ります。

キッズリサーチ:1日目

2012年8月18日(土)

みんなで、三宅島大学のワッペンがついた、お揃いのポロシャツ(スタッフ用)を着た。「キッズリサーチ」の初日。朝にはスコールのような感じで大雨が降ったものの、まもなく晴れて暑くなった。

初日は、やや出足が悪い。聞いたところによると、小学校のほうはプールの行事があって、どうやら子供たちは、そっちに向かったみたい。学校行事なら、しかたないか…というわけで、スローなはじまり。

ところで、三宅島大学の企画をすすめるなかで重要だと考えたのは、「緩さ」の仕組みだ。 もう少し具体的に言うと、それは、いつでも・だれでも自由に加わったり、あるいは離れたりできるということ。もちろん、三宅島大学に「入学」すれば学生証が発行され、決められた単位を取れば「卒業」ということになる。その意味では、いろいろな決まりごとがあるが、(理想的には)行きずりで講座に出ることもできるし、即興的に授業が成り立つことも歓迎している。三宅島大学は、何かのはじまり、どこかに向かう入り口なのだ。

午前の部

予定どおり、10:00スタートのつもりで準備を整えて待っていたところ、けっきょく、最初の「お客さん」が来たのは11:00ごろ。「緩さ」の仕組みで動いている講座だから、まぁノンビリやればいいという気持ちがあるいっぽうで、生徒のいない教室は、やはりさびしいものだ。しばらくして、もう一人。(それでも、講師陣が多すぎるというアンバランス…。)

いきなり島に現れた教室なので、当然のことながら(お互いに)緊張する。まずは、ウォーミ ングアップをかねて、「お絵描き」をした。適当にお題を出して、みんなで描くという単純な遊びだが、この黒板がなかなかいい。壁一面の黒板に向かって、い ろいろな絵を描く。おそらく、子供たちは、ふだん黒板に好きなことを描く機会はない。落書きは叱られる。

三宅島大学(本校舎)にある黒板は、大きくて広くて自由だ。「ひまわり」「ねこ」「カニ」「プール」などなど。だんだん、黒板が埋まっていく。なかでも「三宅島」というお題は、面白かった。一緒になって黒板に向かっていた学生は、資料などで見慣れているせいか、上から見た三宅島を描いた。生徒の一人は、島を横から見て、ごつごつとしたガメラのような「三宅島」を描いた。なるほど、そうだ。どれも「三宅島」だ。

 

午後の部

いちおうの「時間割」はつくってあるものの、基本的にはひとり一人の生徒に合わせて、ぼくたちが「授業」の内容を考える。つまり、究極の「テイラーメイド」型の学習プログラムである。

けっきょく、午後も人数は少なかったが、一人は夏休みの宿題を持参していたので、個人教授(というより、生徒一人に講師二人という贅沢さ?!)。算数のプリントの束を前に、順番に片づけていく。もちろん、ぼくたちは直接「こたえ」を教えることはしない。

飽きないように、簡単に投げ出さないように、脱線しながら、おしゃべりをしながらつき合う。それだけで、いいように思う。そして、(けっきょく1時間半くらいは机に向かっていたので)算数の宿題はめでたく終了!明日は、国語を持って来る…と言っていた。

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もう一人の生徒は、宿題がまだ手つかずでだいぶ残っているようだが、きょうはぶらりと教室に寄ってみた感じで、何も持って来ていなかった。近所でよく釣りをするとのことだったので、デジカメを渡して、辺りの「お気に入り」スポットの写真を撮ってもらうことにした。

首からデジカメを提げて、学生とともに近所を歩き回り、1時間半ほどで帰ってきた。イマドキの小学生は、もう説明などしなくても、デジカメを器用に操る。ふだん、彼が釣りをしながら眺めている風景が、たくさん集まった。大きな空と海。波と堤防。桟橋で拾った魚。

(ここだけの話だけど)この自然に囲まれて、しかも夏休みなら、宿題が後回しになっても少しも不思議ではない。ギリギリまで宿題をサボり、先延ばしにしておくのは、子供たちの特権なのかもしれない。外に出て、太陽を思い切り浴びるのが夏休み。そう考えると、ぼくたちが、朝から室内にこもって「寺子屋」をやっていることのほうがもったいなく思えてくる。

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オトナたちは、しっかりと勉強をさせたい、宿題をちゃんと終わらせて欲しいと願う。いっぽうで、 子供たちは、いま何をするべきかを本能的に知っているのだろう。「緩さ」の仕組みを活用して、できるだけ外に出よう。子供たちの「お気に入り」を、もっと教えてもらいたい。ガメラのような「三宅島」を、身体で感じてみたい。

◎この日誌は2012年8月19日(日)にFacebookの「ノート」に書いたものです。(原文のまま)